🐬 片目のイルカ「ウインク」に出会った
― 傷を負っても、自由に遊ぶ海の仲間 ―
by yu-/dolphinsYU
はじめに
2023年4月。御蔵島の南のポイントで、僕は忘れられないイルカと出会った。
そのイルカは、片方の目がなかった。
でもそのイルカは、そんなことを少しも気にしていないように、元気に、自由に、遊んでいる。
そのイルカに「ウインク」と名前がついていた
片目で泳ぐ姿が、まるでウインクしているように見えるから。
👀まるで“見えてる”ような動き
最初に「ウインク」に会ったとき、僕の横をすっと並走してきた。
しかも、潰れている側の目をこちらに向けて。
一瞬「見えてるの?」と思うくらい、動きが自然でスムーズだった。
たまに反対側の目でこちらを見て、ふっと目が合うこともある。
その時の視線は、なぜかまっすぐで、深い。
🤿 一緒に泳ぐというより“会話してる”ようだった
ウインクはとてもフレンドリーで、人懐っこい。
水面で僕のまわりを何周も回って、お腹を見せたり、うなずいたり。
でもそれはただ「遊んでる」というより、こちらの反応を見ながらやりとりしているような感じだった。
僕がちょっと潜ると、スッと寄ってきたり、目を合わせると、少しだけスピードを落としてみたり。
こちらを「見て」「選んで」「関わってくれている」感覚があった。
...とはいえ、毎回そうとは限らない。
たまに「今日はちょっと...」って顔をして
完全に“塩対応”の日もある(笑)。
でもそれがまたイルカとしてじゃなくその一頭としての魅力で愛着がどんどん深まっていった。
🐣 子どもを守るような行動も
ウインクのもう一つの印象的な行動。
小さなベビーイルカがいるとき、自分が人間の方にやってきて、あえてこちらを引きつけるような動きを見せる。
そして、さりげなく“壁”になるようにして泳ぎ去っていく。
あれはたぶん、「近づかないで」っていう優しいガードなんじゃないかと思っている。
自然の中で、誰に教えられるでもなく、そんな行動を取るってすごいことだ
“幸せそう”ってなんだろう?
ウインクは、片目がつぶれている。
海の中で見ると、それはかなり衝撃的で。
最初に見たとき、僕は正直「痛々しい」「かわいそう」って思ってしまった。
でも……ウインクはそんな素振りを微塵も見せない。
水中でスイスイ泳ぎ、人の周りを回って遊び、うなずき、お腹を見せて、目のあいた方でちゃんと目を合わせてくる。
目がひとつないという大きなハンディがありながら、全力で“今”を生きている。
そこに悲壮感はなく、むしろ誇らしさすら感じる。
「ちゃんと見えてるよ」「平気だよ」って言っているかのように。
そして何より、人との関わりが好きそうなその姿に、僕は救われた。
ただ生きているだけじゃない。“つながろう”とする心が見える。
自然の中で、イルカが傷を負うのは珍しくない。
ケンカ、捕食、病気、多生物からの攻撃、そして人間の活動によるもの。
その中で目を失うほどの傷って、相当な出来事だと思う。
もし人間なら、見た目の変化や不自由さに戸惑って、ふさぎ込むこともあるだろう。
だけどウインクは、気にしてないようにすら見える。
堂々と、普通のイルカのように、人と遊び、仲間と遊び、時に子どもや仲間を守るような行動まで見せる。
でも時々「この子、幸せなんだろうか?」と考えてしまう。
自由に泳いでる。人を避けない。自分を隠さない。たくさんの仲間といる。
だけど“自然にいる”=“幸せ”って、単純に言えるだろうか?
⸻
イルカに限らず、よくこんな言葉を耳にする。
「自然の方がいいよね」
「水族館より、野生の方が幸せだよね」
でも、それって本当?
自然はきれいで、自由で、素晴らしい場所……のように見えるけれど、
同時に、ケガをしても誰も治してくれないし、弱れば食べられる、常に敵がいないかを気にして
過ごしていかないといけない世界でもある。
守ってくれる壁はない。
だからといって水族館が幸せとは思ってない。
「幸せかどうか」は、いる場所じゃなくて、どう生きてるかなんじゃないかと、僕は思う。
ウインクを見ていて、そんなことを強く感じた。
片目を失っても、気にせず、堂々とまっすぐに、それは幸せそに見えるところもある。
じゃー本当に幸せなのか?
正直その答えは見つかることはない。ただどこにいるかじゃなくどう生きてるかから感じ取れるものがある
そう思わせてくれる存在だった。
🎬 最後に
ウインクに何度も会って、僕はただの「イルカ」じゃなくて、「あの子」として見るようになった。
特徴的で認識しやすいのもあるけど
片目で、でも堂々と、元気に泳いで、よく遊んでくれる。
この海には、ちゃんと“個性を持った命”が生きている。
そんなウインクの姿を、少しでも多くの人に知ってもらえたら嬉しい。
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